「もうこれ以上、病院でできることはありません」。年末に突然右耳が聞こえなくなった小学5年生の男の子が、そう言われて当院に来られました。聴力検査では右耳の平均聴力が73.3dB(3分法)。500Hzより高い音は70〜80dBの大きな音でないと聞こえない、重症の突発性難聴です。処方はアデホスとメチコバールのみ。発症から1か月、ご家族が「どうにかならないか」と鍼灸を選ばれました。
結論から言うと、20回の施術で、完全ではありませんが「軽度の難聴」と判定されるところまで聴力が回復しました。ただし、最初の5回はほとんど変化がなく、我慢の時期がありました。その経過を正直にまとめます。
目次
患者情報
- 年齢・性別:小学5年生・男の子
- 主訴:右耳の突発性難聴(初回の聴力検査:右耳の平均聴力73.3dB=重症)
- 発症:2025年末、急に右耳が聞こえなくなった
- 病院での治療:お子さんということでステロイドは使用せず、アデホス(ATP製剤)とメチコバール(ビタミンB12製剤)の内服のみ。「これ以上できることはない」と説明を受ける
- 来院時期:発症から約1か月後
施術期間
2026年1月 〜 2026年6月 計20回
症状の詳細
初回の聴力検査では、右耳は500Hz以上の音が70〜80dB(平均73.3dB)でないと聞こえない状態でした。左耳は正常です。右側からの音や会話はほとんど聞き取れない状態でした。耳の症状以外で目立ったのは、首の前側にある胸鎖乳突筋(きょうさにゅうとつきん)の硬さです。この筋肉は耳のすぐ下から鎖骨につながっており、耳周辺の血流と関係が深い場所です。
突発性難聴は「発症から早く治療を始めるほど回復しやすい」と言われ、一般に発症2週間以内が勝負とされます。発症1か月・重症・小学生という条件は、正直に言って簡単なケースではありませんでした。
聴力検査の比較(初回 → 20回目)
下のグラフは聴力検査の結果(オージオグラム)です。○が右耳、×が左耳で、下にあるほど聞こえにくいことを表します。初回は右耳の○が70〜80dBの位置にありましたが、20回目には20〜35dBまで上がっています。


※ご家族の了承を得て掲載しています。
施術経過(全20回)
初回〜5回目(約1か月半)
まずは全身の調整を中心に、首・肩まわりの緊張、特に胸鎖乳突筋の硬さをとることに集中しました。小学生ですので鍼の本数は少なめ・浅めから始め、怖がらずに受けられる範囲で進めました。
この時期、聴力に目立った変化はありませんでした。ご家族も不安だったと思いますが、お子さんは回復力が高いこと、首の状態が少しずつ良くなっていることをお伝えし、「子どもの回復力を信じて続ける」方針で施術を続けました。
6回目〜14回目
胸鎖乳突筋の硬さが取れてきた段階で、耳まわりへの局所的なアプローチを加えました。肩甲背神経(首から肩甲骨に向かう神経)の走行部と、耳の上にある側頭筋に対して、低周波のパルス通電(鍼に弱い電気を流す方法)を行いました。小学生にとっては少し我慢のいる施術ですが、本人が「治したい」と頑張って受けてくれました。
この時期、病院の聴力検査では数値が少しずつ改善していきました。ただ、検査の数値が上がっても日常会話の聞こえはなかなか戻らず、本人やご家族の実感としては「まだ聞き取りにくい」状態が続きました。数値と実感のズレがある、もどかしい時期です。
15回目〜20回目
15回目ごろから、日常会話が「聞き取りやすくなってきた」と実感が出始めました。検査の数値が先に上がり、聞こえの実感があとから追いついてきた形です。その後も全身調整+耳まわりのパルスを継続し、20回目(2026年5月)の聴力検査では、右耳は20〜35dBの範囲まで改善し、「軽度の難聴」の区分に入りました。完全に元通りではありませんが、会話や学校生活での不便は大きく減っています。
考察
今回のケースで重視したのは、耳そのものより耳につながる首の状態でした。胸鎖乳突筋の硬さは内耳への血流を妨げる一因になりえます。まず全身と首の状態を整え、その上で耳まわりへ局所的に働きかける、という順番が結果につながったと考えています。
もう一つは「実感がなくても続けた」ことです。最初の5回はほぼ変化なし、その後も検査の数値は上がるのに聞こえの実感は戻らない、という時期が15回目まで続きました。突発性難聴、特に重症例では、最初の1〜2か月は目に見える変化が出ないことがあります。数値だけ上がって実感が追いつかない時期も含めて、ここでやめてしまうと、その後の改善に届きません。お子さんの回復力を信じてご家族が通い続けてくださったことが、最大の要因でした。
子どもの突発性難聴と鍼灸治療について
突発性難聴は、ある日突然、片方の耳が聞こえにくくなる病気です。原因ははっきり分かっていませんが、内耳の血流障害やウイルス感染が関係すると考えられています。標準的な治療はステロイドの内服や点滴ですが、お子さんの場合は副作用への配慮からステロイドを使わず、アデホス(血流改善)とメチコバール(神経の修復)だけで様子を見ることがあります。
鍼灸は、首・肩まわりの筋肉の緊張をゆるめ、耳周辺の血流を改善することを目的に行います。病院の治療と併用でき、薬を止める必要はありません。「病院ではもうすることがない」と言われた段階でも、耳につながる首や血流の状態にはまだ働きかける余地があります。
ただし、突発性難聴は時間との勝負です。まず耳鼻科を受診し、その上で早めに鍼灸を併用することをおすすめします。発症から時間が経つほど、回復の可能性は下がっていきます。
患者さまの声(保護者の方より)
施術終了後、保護者の方からLINEでご感想をいただきました。

朝起きて突然右耳が聞こえなくなり、耳鼻科の薬を飲んでも症状はかわりませんでした。たまたまネットで当院を見つけ電話をしました。子供でも本人が頑張れたら大丈夫ですよと言っていただき伺いました。
初めは緊張していましたが痛みもほとんどなく、途中から気持ちよいのかねていました。毎回先生に症状や困り事を伝えて助言を頂きました。回復力を信じましょうと寄り添っていただき心強かったです。
全く聞こえなかった右耳が聞こえるようになりとても嬉しく思っています。あきらめず頑張ったのがよかったかなと思います。今はソフトに遊びとニコニコ笑顔で過ごしています。あせらず、あわてず、あきらめず、、感謝です。本当にありがとうございます。
「あせらず、あわてず、あきらめず」。最初の5回で変化がなく、数値が上がっても実感が追いつかない時期も、ご家族がこの言葉どおりに通い続けてくださったことが、今回の回復につながりました。施術中に寝てしまうくらいリラックスして受けてくれた本人の頑張りにも、感謝しています。
※個人の感想であり、効果を保証するものではありません。
岡山市で突発性難聴・子どもの難聴でお悩みの方へ
「薬を飲んでいるけど変化がない」「もうできることがないと言われた」「子どもだから強い治療は避けたい」。そんなご家族の方は、一度ご相談ください。しらお鍼灸院(岡山市南区)では、小学生のお子さんにも、怖がらずに受けられる範囲で施術を行っています。
※施術効果には個人差があります。突発性難聴が疑われる場合は、まず耳鼻咽喉科を受診してください。



